「この人とは離婚するかもしれない」
そう思って結婚する人は、まずいないですよね。
私も、そうでした。
「お前が死んだら俺も死ぬ」と、泣きそうになりながら言っていた前夫。
まさか自分が不倫(しかもできちゃった再婚)される立場になるとは、夢にも思ってもいませんでした。
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「ブラック企業勤務」を隠れ蓑に不倫
前夫はブラック企業に勤めていました。帰宅は22時以降、そのまま会社に泊まり込むこともよくありました。
ただ、私は「そんなものかな」と思い、あまり追及していませんでした。
結婚して3年が過ぎました。
私はたまたま前夫のカバンから映画の半券を見つけました。
それは当時大ヒットしたラブストーリー。
とても男の人が観に行くような映画ではありません。
夜中、前夫が寝ているタイミングで
「まさか、そんなことないよね」
と祈るように財布を漁りました。
見つかったのは、前夫の職場の近くにあるラブホテルのスタンプカード。
何個もスタンプが押されていました。
それから、旅館の領収書もありました。
日付は義両親が「息子のせいで旅行にもいけず不憫だから」と、私を旅行に連れて行ってくれた日と一致していました。
私は翌日の夜、前夫にメールを突きつけ、浮気を追及しました。
前夫は、「自分の部下とつい浮気してずるずると関係を続けてしまった。別に好きとかそういうのではない。もうしない。別れる」と言いました。
私はその言葉を信じることにしました。
しかし、前夫とその女性の関係は、その後も続いたのです。
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妻の入院中に不倫相手を自宅に連れ込む
私は結婚した翌年に妊娠したものの、残念ながら子どもは死産。
その後も原因不明の体調不良が続いていました。
主治医が変わったことでようやく原因が判明しました。
2週間の入院と1年間の通院治療が必要で、その間は妊娠できないと言われてしまいました。
どうしても子どもが欲しかった私には、その1年はとても長く感じられました。
2週間の入院の間、義両親は毎日のように通ってくれましたが、前夫は一度しかお見舞いに来ませんでした。
退院の数日前、私は日帰りの一時帰宅を申請し、自宅に帰りました。
読み返したい本が自宅にあったからです。
さすがに家に呼ぶことなんてありえないだろう、そう信じながらドアを開けました。
そこにあったのは、女物の下着や服、歯ブラシ。
なんと、私が入院している間、前夫はちゃっかり不倫相手を家に連れ込んでいたのです。
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私は病院に電話して帰りが遅くなることを告げ、義両親を自宅に呼び寄せて事情を説明しました。一人きりで前夫と不倫相手を待つことに、耐えられなかったのです。
そして3人で、前夫と不倫相手の帰宅を待つことにしました。
しばらくして、携帯に電話がかかってきました。
「お前、病院から電話があったぞ。何してんねん」
前夫からでした。
私を心配した病院は、よりによって前夫に電話をかけたのです。
さすがに病院には「前夫の不倫現場をおさえたいから帰れない」とは言えませんでした。
「何してんねん? それはこっちのセリフや! なんでうちに女の下着があるんや!」
私は電話で前夫を罵倒しました。前夫と不倫相手を連れてくるように言いましたが、前夫は「あいつは関係ないから」と拒否。
私は義両親の車で、病院に戻らざるを得ませんでした。
車の中でよぎったのは、離婚の二文字でした。
自分が闘病生活をしている間に、不倫するような人とはやっていけないと感じたのです。
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弁護士に相談するも「勝てない」と言われる
退院して自宅に戻った私は、前夫が寝ている間に携帯のロックを解除しました。
前夫は自分の誕生日でロックをかけていました。
私は寝不足になりながらも、前夫のメールを1件ずつ、せっせと自分のパソコンのメールアドレスに転送しました。
数日後、私は地元の弁護士事務所を訪れました。
そこでは、初回5,000円で弁護士相談をしていました。
私は対応した若い弁護士に、メールを印刷したものを見せ、前夫と不倫相手から慰謝料を取りたいという話をしました。
しかし弁護士から帰ってきた答えは、「証拠として弱く、勝てない可能性がある」でした。
ヘッダ情報を含めてメールを転送しているので、送信元も送信先も明らかです。
しかし、それでは証拠にならないと言われました。
「ホテルや自宅から出てくるところの写真ぐらい、わかりやすいものでないと証拠にはならない。本人たちが認めればよいが、認めなければ負ける可能性もある」と。
正直、もっと簡単に慰謝料を取れると思っていました。
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私は次に探偵事務所に行き、浮気調査の見積もりを出してもらいました。
1日20万でした。
前夫は病院での騒動以来、私を警戒して早く帰るようになりました。
つまり、証拠を取りづらくなったのです。
裁判で勝てるかどうかわからないと弁護士に言われたものに、浮気調査に1日20万を費やす勇気はありませんでした。
そして、まだ前夫に情が残っていました。
「そこまでしなくてもいいんじゃないの?」
とささやく、もうひとりの私がいたのです。
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前夫が私に冷めた理由と、不倫に走った理由
私は復縁を持ちかけましたが、前夫からは「病院の件で罵倒されたときに冷めた」と言われました。
不倫のきっかけについては、「子どもを死産したあとに、しばらく夜の生活を拒否されたから。最初は遊びのつもりだったけど、本気になった」と言われました。
あのときは悲しくて、お互いに泣きました。
しかし、残念ながら、その乗り越え方は夫婦で違っていたのです。
私は自分の親に、離婚、そして裁判を考えていることを話しました。
父からは「夫婦のどっちが悪いかに、100:0はありえへん。裁判をやって泥沼になるのが、お前の望んでいることなんか? お前にも至らないところがあったんや。潔く身を引け」と説得されました。
結局、その年の10月末、慰謝料をもらわずに前夫と離婚しました。
残念ながら、不倫相手から、直接謝罪の言葉を聞くことはできませんでした。
私は一度でいいから3人で話をしたかったのですが、前夫が「もう別れたから。関係ないから」とかたくなに拒否したのです。
不倫相手をかばおう、守ろうとする前夫を見るのに、耐えられなかったというのもあります。
慰謝料をもらわない代わりに、結婚後の貯金は全額私がもらうことになりました。
微々たるものでしたが……。
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離婚から2ヶ月後のイブにできちゃった再婚
結婚から2ヶ月後の年末、私は前夫との共通の友人からご飯に誘われました。
その人は、神妙な面持ちでこう言いました。
「言うべきかどうか、すごく悩んだんやけど……でも知っておくべきやと思って……」
その人からもたらされたのは、衝撃の事実でした。
なんと前夫は、クリスマスイブにその不倫相手と入籍。
しかも相手のお腹の中には子どもがいるというのです。
思わず「お前ら、血は何色だーっ」と叫びそうになりました。
前夫がその不倫相手と別れていないことは、わかっていました。
でも、さすがに少し時間を置くだろうとたかをくくっていました。
まさか、わずか2ヶ月で再婚するとは、夢にも思っていなかったのです。
しかも、私が子どもを望んでいたことを、少なくとも前夫は知っていたにもかかわらず、です。
わざわざ入籍の日にクリスマスイブを選んだというのも、私の怒りに油を注ぎました。
人ひとりの人生を潰しておいて、そんなロマンチックなことができるのかと。
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私は、二人から慰謝料を取らなかったことを、心底後悔しました。
少しでも私に対して申し訳ない気持ちがあれば、2ヶ月でできちゃった再婚なんてしないはず。
もっと徹底的に、戦うべきでした。
双方からきっちり慰謝料を取り、経済的にダメージを与えていれば、少なくともしばらくは子どもを作るのはやめておこうと考えたはずです。そのような理性が2人にあればの話ですが……。
あの2人に、嘲笑されているような気がしました。
「お金を払わずに済んで、ラッキーだったね」と。
振り返れば、私が2人から慰謝料を取る証拠をつかめる大チャンスは、2回ありました。
1回目は、私が前夫の両親と旅行に行っている間。
そして2回目は、私が入院している間です。
1回目は、仕方ないところもあります。
その時点では私は不倫を疑っていませんでした。
今振り返れば、残業や会社での寝泊まりが多く、怪しいなとは思っていましたが……。
でも2回目は、悔やむところがたくさんあります。
あの時点で探偵に調査を依頼していれば、確たる証拠がつかめたはずです。
そして病院に一時帰宅から遅くなる事情を説明できないのであれば、前夫が自宅に不倫相手を連れ込んでいる時点で、私は彼を泳がせるべきだったのです。
「病院の退院が一日延びた」
「女友達の家に遊びに行く」
「急に出張が入った」
何でもいいから理由をつくって、その日に探偵を張り込ませればよかった。
しかし私が選んでしまったのは、前夫を罵倒して気持ちを冷めさせたうえに、警戒させるという最悪のルートでした。
結局私は、バカみたいに信じていたのです。
前夫は自分のところに帰ってくるだろうということを。
離婚前も、離婚してからも。
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もしかしたら数年後、また出会ってやり直せるかもしれない……。
そんなドラマみたいな展開を、心のどこかで期待していました。
しかしそう考えていたのは私だけで、前夫はさっさと新しい生活を築いていたのです。
離婚しなければよかった。籍を抜かなければよかった。
そう悔やんでも、後の祭りでした。
離婚後に訴えたところで、もう夫婦の関係でない以上、勝てる可能性は更に低くなってしまうのです。
人並みの幸せは掴んだけど……今も引きずる想い
それから数年後、私は縁があって再婚し、念願だった子どもも授かりました。
あのまま意地になって、前夫と離婚せずにいたところで、夫婦関係は冷え切り、おそらく子どもは望めなかったでしょう。
離婚の選択は正しかったと信じています。
早く自分の人生を取り戻せたからです。
ただ、自分の気持ちに区切りをつけることには、失敗してしまいました。
もっと早く弁護士に相談しておけばよかった。
他の弁護士にも、相談してみればよかった。
「夫婦関係が破綻していたと主張されるのが怖い」と逃げずに、戦えばよかった。
あのときの絶望感と敗北感。
2人から慰謝料を取っていればよかったというドロドロした思いは、たとえどれだけ幸せになっても、おそらく一生引きずると思います。